PTSDは正常な反応

PTSD

何年か前、心的外傷後ストレス障害(PTSD)は普通、砲弾ショック、あるいは戦争神経症と呼ばれ、おもに戦争からの帰還兵を対象に研究されていました。しかし現在、事情はずいぶん変化しました。PTSDと診断されるのは、兵士だけではありません。

何らかの精神的外傷(トラウマ)となる体験をした人はPTSDになる可能性があります。その体験は、戦争から性犯罪、自動車事故までさまざまです。

このように、PTSDと診断されるには、それ以前にショックとなるような出来事を本人が経験済みであることが必要です。ショッキングな出来事に遭遇した場合、私たちの身体にはどのような変化が生じるでしょうか。

突然の恐怖のせいで、ある種のホルモンが大量に分泌され、それらのホルモンのために感覚機能が危険を過剰に警戒するようになります。ホルモンは、普通は危険が過ぎ去ると正常値まで下がりますが、PTSDになった人は、高い状態のままです。

生じたことはすでに、過去としてのこととなっているにもかかわらず、その時の恐怖は、まるで立ち退き要請を無視して居座り続ける厄介な借家人のように、被害者の心の中に暗い影を残します。

PTSDは正常な反応

もしあなたが深い心の傷を負い、同じような後遺症を抱えておられるとすれば、そのような経験をしているのは自分だけではないということをぜひ知ってください。PTSDは正常な人間が自分ではコントロールできない恐ろしい状況に遭遇した場合に見せる正常な反応です。

もちろん、PTSDを「正常」と呼んだからといって、トラウマの経験者がだれでもPTSDになるというわけではありませんが、数としては大方の人が考えるよりずっと多く生じています。

そして、あらゆる種類の人がさまざまなタイプの事件の後でPTSDになっています。最近の研究によると、トラウマとなる出来事は、兵士や戦争被害者だけでなく、平時の民間人にも頻繁に起きる事を明らかにしています。

そして、そうした出来事を経験してPTSDになる人は少なくありません。医療処置や心臓発作がきっかけでPTSDになった人もいます。PTSDはかなり一般的な障害になりつつあります。PTSDは私たちが考えている以上に日常生活の中にある症状なのかもしれません。

さらなる影響

PTSDになってしまった人は、フラッシュバックに苛まれたり、過覚醒(PTSDを引き起こした状況が去ってからも生じる身体の不調)を経験します。

そういったことは苦痛ですが、人は極度に安全を脅かされる経験をしてしまうと、身の回りの世界に対する基本的な安心感を失うだけでなく、人に対する安心感も失ってしまいやすいもろさがあります。

それまで何でもないような、心許せる家族や恋人に対してさえ、距離感を覚え、見知らぬ他人のような感覚に陥るかもしれません。心的外傷の引き金となるトラウマは、トラウマとは直接関係のない人と人とのつながりさえも破壊してしまうことがあります。

PTSDは人間の正常な反応ですが、弱い人間に対する限度の超えたショッキングな出来事が生じるこの世の中が異常なのです。