心的外傷後ストレス障害(PTSD) PTSDの症例

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交通事故に遭遇した吉田さんは次のように回想しています。

「車の衝突事故から2か月がたっても、泣くのをやめることも夜ぐっすり眠ることもできませんでした。外出することさえ恐ろしく感じました」

吉田さんは心的外傷後ストレス障害(PTSD)に苦しんでいます。これは人を衰弱させる慢性病で、経験した痛ましい出来事を意に反して繰り返し思い出したり夢に見たりするのが特徴です。

PTSDになった人はちょっとしたことに驚くという傾向があるかもしれません。例えば、ベトナム戦争の一帰還兵が結婚式の日に、車のバックファイアー音を聞いて草むらに飛び込んだという話があります。

周囲には万事順調であることを示す証拠がすべてそろっていたはずです。戦争終結からもう25年もたっており、そこはベトナムではなく米国でした。

着ていたものも戦闘服ではなく、白いタキシードでした。ところが、あの昔の刺激を受けた時、この人はとっさに身を隠そうとしたのです。戦場での心的外傷は、PTSDを引き起こす原因の一つにすぎません。

この障害は実際の死や死の脅威や大けが、あるいは身体に危害の及ぶ恐れを伴う一つの、もしくは一連の出来事」によって生じる場合があります。

それは洪水、火事、地震、自動車事故、爆撃、発砲、拷問、誘拐、暴行、強姦、児童虐待など、自然災害や事故もしくは人の行為かもしれません。

例えば生々しい証言や写真によって、痛ましい出来事を見たり知ったりしただけでも、PTSDの症状を誘発することがあります。関係者が家族や親しい友人だった場合は特にそうです。

時間が必要

もちろん、心的外傷に対する反応は人によって異なります。ほとんどの人は、痛ましい経験をしても深刻な精神病的症状を呈したりしません。

また、症状が現われても、必ずしもPTSDの形を取るとは限りません。では、ストレスからPTSDになる人の場合はどうでしょうか。

時たつうちにその痛ましい経験に結び付いている感情をうまく処理できるようになって、安らぎを得る人もいれば、長い年月が過ぎても痛ましい出来事の記憶と闘い続けている人もいます。

いずれにせよ、PTSDで苦しんでいる人、また、そうした人を助けたいと思っている人は、回復には忍耐が必要であることを覚えておくべきです。冒頭で紹介した吉田さんの場合は、再び車を運転できるようになるまでに半年かかりました。

事故から5年たって吉田さんはこう述べました。「進歩したことは確かですが、車の運転が以前のように楽しく思えることは二度とないでしょう。しなければならないからしているだけです。でも、事故直後のどうしようもなかった時からすれば、ずいぶん良くなったと思います」。