アルツハイマーの症例

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ある一人のアルツハイマーを発症した男性の例を見てみましょう。

主人の雄一は公共事業工事の現場監督でしたと、妻の美枝さんは語ります。主人が退職したいと言ったときには、とても驚きました。主人はまだ58歳でしたし、とても気の利く勤勉な人だったからです。

後で主人の同僚の方から聞いて分かったのですが、主人はおかしな判断ミスをするようになっていました。同僚の方たちは主人を度々かばってくれていたのです。

主人が退職すると、わたしたちは中古の一戸建てを購入しました。夫はとても器用な人だったので、家の修理などをして忙しく過ごすものと思っていました。ところが,夫は決まって修理屋を呼びました。今、思い返せば、いつしか修理ができなくなっていたものと思われます。

その同じ年、わたしたちは3歳になる孫娘を連れて一週間ほど沖縄で休暇を過ごしました。孫娘は、わたしたちが泊まっていたホテルの向かい側にある公園が気に入ったようでした

ある日の午後4時ごろ、主人は孫娘を連れて公園へ遊びに行きました。30分ほどしたら戻ると言っていましたが、午後7時になっても帰ってきませんでした。

警察に電話しましたが、行方不明になってから24時間たたないと捜索は始められないと言われました。その晩、わたしは気が狂うのではないかと思いました。

というのも、二人が事件に巻き込まれたという考えが頭から離れなかったのです。翌日の昼ごろ、ドアをノックする音がしました。そこには主人が孫娘を抱いて立っていました。

アルツハイマーと診断される

「『どこに行ってたの』と、わたしは言いました。「『怒らないでくれ。覚えていないんだ』と、夫は答えました。「『おばあちゃん、あのね、まいごになったの』と、孫娘は言いました。

「考えてみてください。ホテルの真向かいの公園にいたのに迷子になったのです。二人がその晩どこで寝たのか、今もって分かりません。いずれにせよ、近所の人が二人を見つけ、泊まっている場所を教えてくれたのです」。

その出来事があってから、美枝さんは雄一さんを神経科医に連れて行きました。雄一さんは痴呆症(知的機能の低下)にかかっていると診断され、最終的にはアルツハイマー病であることが分かりました。

アルツハイマー病は、今のところ効果的な治療法のない不治の病気です。

イギリスのニュー・サイエンティスト誌によると、アルツハイマー病は、「先進国において、心臓病、ガン、脳卒中に次ぐ4番目の殺し屋」となっています。この病気は、「老齢に伴う主要な慢性疾患」とも呼ばれてきました。

しかし、雄一さんの場合のように、初老期に発病することもあります。裕福な国々では長生きする人の数が増加傾向にあり、痴呆症の患者数は驚くべきものになることが予想されます。

一つの研究によると、1980年から2000年の間に、英国では14%、米国では33%、カナダでは64%の増加が見られるかもしれないということです。

日本においては2000年の時点で150万人の患者がいると見られていましたが、2012年の時点で全国に約462万人と推計されております。

そして、厚生労働省は2015年1月、全国で認知症を患う人の数が2025年には700万人を超えるとの推計値を発表しています。

65歳以上の高齢者のうち、5人に1人が認知症に罹患する計算となっており、今後ますますこの病が人々の悩みの種となることが予想されています。