適応障害の治療「支持療法」

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適応障害の精神療法の一つに「支持療法」というものがあります。これは、患者に対して医師が「指示する」のではなく、患者の味方になり、サポートするという意味で「支持」します。

適応障害の症状がひどくなってしまった患者は、学校や会社に行けず、日常生活を送るのに支障をきたしています。

気分が落ち込み、学校や会社に行けなったのは、患者本人が自分の中で何らかの理由づけをしているからです。周囲との接触も限られつつある状況では、本人に指摘してあげられる人もいないかもしれません。

支持療法ですが、まずは、患者がストレスに気づくこと、なぜそのように感じるのか、感情が生まれる過程や心の奥底にあるものに気づくといったことを目指します。

支持療法は会話

支持療法は、医師やカウンセラーなどの医療側の人間と患者との会話で進められてゆきます。基本的に、話を聞く医療側は、患者の話に耳を傾け、受け入れ、理解し、共感したり同情したり慰めたりします。

そうやって話を大きな器で聞いてもらう中で患者自身が自らの問題に気づき、変化してゆくのを見守るいうスタンスになっています。

話の聞き方

支持療法では患者が話すことが求められます。自分の意見を言うのはもしかしたら苦手かもしれません。そんな中で、話を聞く医療側はどのような姿勢で患者の話に耳を傾けるのでしょうか。

褒める

患者は適応障害の症状で憂うつになっており、自分や他人を責めたり、自尊心が低下していて自分はダメな人間だと感じやすくなっています。

ですから、医療側は客観的な見方を差し伸べ、患者自身が気づいていない患者本人の長所を見つけて褒めるよう心がけます。

信頼関係

患者自身の自尊心の低下ゆえになかなか褒めても受け入れてくれないかもしれません。支持療法を進めてゆく上で重要なのは双方の信頼関係です。

どちらにも言えることですが、いくら会話をしたところで、心のなかで信頼しておらず、不信感があれば治療は形だけのものとなり、実際に症状は良くなりません。

医療側も親身な関わりや心からの言葉によって医療側が信頼に値するものであることを示し、患者を安心させてあげなければなりません。患者の側も信頼するように努め、何か不満があれば尋ねるようにする態度が求められます。

経験に基づく客観的な意見

患者の陥っている問題は人類始まって以来、誰も経験したことのない未知のものではなく、似たようなケースが過去にあったはずです。

医療側は経験ゆえにそうしたケースに通じていますが、患者にとっては初めて経験する未知の問題かもしれません。

ですから医療側は、患者に「大した問題ではない」といった態度を取るのではなく、理論的に説明し、患者が持っている意味付けとはまた違う新たな意味付けをします。

そうすることによって、例えば患者は、「自分の経験した問題は多くの人が経験していて、解決可能なものだ」と前向きな考え方を持てるようになります。このようにして話を聞きながらも、勇気づけたり、アドバイスをしたりします。

患者と問題とを分ける

問題そのものが明らかになってくれば、問題にネーミングをし、個別化をはかります。そうすることによって、患者と問題とを切り分け、患者自身が問題をコントロール可能になるよう目指します。

また患者自身が気づいていない無意識レベルの感情に医療側が気づいたら、それがどのような感情か、どのような過程で生まれてくる感情か説明し、患者も気づくよう援助します。

これからに備える

今後、どうしてゆけばよいのか、経験や事例をもとに患者に情報を提供し、不安を軽減させてあげます。

明らかに間違った考え方ゆえの間違った計画があれば、やめさせることもあります。 そのようにして、「これから」に備えます。

このような感じで支持療法は行われてゆきます。うまくゆけば、患者はだんだんと自信を持ち、以前ほど悲観的ではなくなり、わずかでも希望が持てるようになってゆきます。

基本的に医療側は会話をよく聞く受容的なスタンスで臨みますが、患者側は医療側に依存するのではなく、医療側のヘルプを用いつつ自分で問題としっかり向き合う態度が必要です。

支持療法の主人公は医師ではなく、患者本人なのです。