自閉スペクトラム症(アスペルガー症候群) 相手の表情が発する情報がわからない

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レーダー無しで飛行機を操縦するようなもの

アスペルガー症候群の相手と感情を共有し、心を響き合わせる能力が弱いということは、レーダーなどの計器類なしでパイロットが飛行機を操縦しているようなものです。

パイロットにとって頼りになるものは自分の目だけです。現実問題としてそれはとても困難を極め、墜落などの重大事故の可能性が大きくなります。

対照的に、健常な人の場合、計器類などのレーダーを兼ね備えた飛行機を操縦するパイロットのようです。

パイロットは自分の目を使って見えるものを判断できると同時に、目で見えないものも計器類から読み取る事が可能です。

健常者の場合も、頼りとなる「言葉」に加え、相手の表情や身振り、眼差し、様子などから相手の感情を読み取ることができます。

もし、言葉以外からの情報がまったく理解できないとすればどうでしょうか。相手の表情や身振り、眼差し、様子を見ても何も感じないとすればどうでしょうか。それはパイロットが計器類なしで飛行機を操縦しているようなものです。

飛行機の速度、外の温度、近くに飛行機が飛んでいるか、進行方向に積乱雲などの障害物があるかどうか…こういったことが分からずに飛行しているようなものです。その飛行はじつに危険なものでしょう。

人間関係のコミュニケーションにおいても、相手の表情や身振り、眼差し、様子といった言葉以外の情報をうまく利用できなければ、失敗する可能性が高くなります。

もともと備わっていない能力

生まれつき目の見えない人に赤色はどんな色か、青色とはどんな色かと説明するのは困難を覚えます。

なにしろ生まれてこのかた、目が見えないわけですから、赤色とは「夕焼け」のような、または「りんご」の色と説明したところで、夕焼けがどんなものか、りんごがどんなものか、想像の域を出ません。

生まれつき目の見えない人に赤色はどんな色かわからないように、アスペルガー症候群の人も、相手の表情や身振り、眼差し、様子からどんなことが読み取れるのかわかりません。

人の顔や表情を見て、何かを読み取る能力が乏しいといろいろとハンデがでてくるのももっともです。多くの人にとって、そのような能力は特に意識することもなく、いつの間にか自然と身についているものなので、「備わっていない」ということがどういうことなのか、想像しにくいものです。

人の顔は多くを物語る

人の顔というのは、その人のその時の気分や感情を表すものです。それだけでなく、その人の性格やこれまでの体験を物語ることもあります。このように、顔というのは多くの手がかりを与えるものです。

顔が多くを物語るからこそ、多くの人は顔の手入れに精を出し、一日に何回か鏡で自分の顔を見て状態の確認をするのです。

アスペルガー症候群の人の場合、この「顔」に対する認識力が低いことが知られています。顔がなかなか覚えられず、表情から情報を読み取るのが苦手です。広汎性発達障害という分類のもとにアスペルガー症候群と自閉症は入ります。

アスペルガー症候群と同じグループに分類される自閉症の場合、3,4歳の年齢でもしばしば母親の顔がわからないということが観察されています。顔の形ではなく、声や匂い、肌触りで母親を認識していると考えられています。

※2013年発表のアメリカ精神医学会の新しい診断基準DSMによりますと、広汎性発達障害やアスペルガー症候群は「自閉症スペクトラム障害」という名称で統一されることになりました。よって、日本においてもこれからは「アスペルガー症候群」という呼び方はなくなるものと思われます。新しい病名は「自閉スペクトラム症」もしくは、「自閉症スペクトラム障害」(Autism Spectrum Disorder 通称ASD)となります。