自閉スペクトラム症(アスペルガー症候群) 考えられる原因

何に原因がある?

アスペルガー症候群の原因に迫るにあたり、今回は自閉症スペクトラム障害という同じグループに属する広汎性発達障害・自閉症の場合なども参考に考えます。

遺伝子説

自閉症の遺伝的研究で、一般人口における有病率が0.6%だったのに対し、第一子に自閉症の子どもが生まれた夫婦で、第二子に自閉症の子どもが生まれる頻度は3~5%でした。

頻度は低いものの、一般人口における有病率から比較考慮すると、やはり遺伝的要素が関係していることがうかがえます。

双子の研究では、さらに関与を感じさせる結果が出ています。二卵性双生児の場合、一方が自閉症ならば、もう一人が自閉症である確率は5~10%です。

ところが、一卵性双生児の場合は、両者とも自閉症の率は60~90%と高率でした。この結果より、自閉症の原因に遺伝子が関係していることがかなり高いといえます。

脳の働きとの関係

自閉症の研究で知られるイギリスの発達心理学者バロン・コーエンは、様々な表情を浮かべた目の写真を見せて、その時脳の活動を調べました。

健常者では、写真の目を見ると、偏桃体や内側前頭葉が活発に使われていましたが、アスペルガー症候群や高機能自閉症の人では、偏桃体は全くと言っていいほど機能しておらず、内側前頭葉もあまり使われていませんでした。

その代わりに、物を認識するときに使われる領域が活発に使われていました。

また、セロトニンに関して、自閉症では、約3分の1のケースで、血中のセロトニン濃度が高く、アスペルガー症候群の場合、前頭葉などの大脳皮質で、セロトニン2A受容体密度の減少が報告されています。

強迫性障害でも前頭葉などでセロトニン2A受容体密度の減少が報告されています。また、障害と無関係に、暴力的で衝動的な傾向が強い人で同じようにセロトニン2A受容体密度が低い傾向があります。

この、セロトニン2A受容体密度が低いことは、不安感の強さや強迫的な傾向、癇癪を起こしやすい傾向と関係しているのかもしれません。

また、神経伝達物質のひとつであるGABAの二種類の受容体も、健常者に比べて、密度が低いことが報告されています。

GABAは、抑制系の伝達物質で、不安感や緊張、興奮を鎮める方向に働きます。GABAの働きが弱いことは、興奮しやすさやてんかん発作を起こしやすいことに繋がっていると考えられています。

いくつかの点を取り上げましたが、こうした点からも脳の機能障害が関係しているのではないかと考えられます。

社会環境説

アスペルガー症候群の原因に、親の育て方などの心理社会的要因という説もありましたが、現在はそうではなく、遺伝的要因や器質的要因によるものと考えられています。

ただ、この親の育て方や本人を取り巻く環境は非常に重要で、本人が自信をもって人生を送れるか、幸福な生涯を送れるかに深く関係してきます。

親が共感性が乏しく、愛情ある関心を子どもに注がないようなタイプの人であれば、遺伝的要因は環境的な影響によってさらに強められることが考えられます。

現代の親たちには経済的な圧迫などにより共働きをすることも多く、子育てに回せるエネルギーや時間、関心が少なくなりがちです。

知らず知らずのうちに子供たちはネグレクト(育児放棄)され気味の状態になっているのかもしれません。

文明的要因

イスラエルで行われた広汎性発達障害の調査では興味深い結果が得られています。イスラエルは移民の多い国ですが、ヨーロッパだけでなく、アフリカやアメリカからも人が移り住んできています。

ヨーロッパで生まれてイスラエルに移住した人と、アフリカで生まれてイスラエルに移住した人を比較しました。

ヨーロッパで生まれた人は、イスラエルで生まれた人と同じ割合で広汎性発達障害が見られましたが、アフリカで生まれた子どもには全く見られませんでした。

この結果は、何らかの文明的要因が広汎性発達障害の増加と関係しているものと予想されます。このように、いくつかの原因が考えられます。

上記のような要因をはじめとして、ホルモン関係説やワクチン説、自己免疫説、鉛などの重金属説、周産期合併症説など、様々な原因が提唱されています。