自閉スペクトラム症(アスペルガー症候群)の人の助けになる その1

力を合わせる

家族や周囲の人たちはアスペルガー症候群の人たちに対して何ができるのでしょうか。ここでは、助けになれる点について考えます。

ルールを明確にすることや一貫した対応の必要性

アスペルガー症候群の人は、社会的常識が分かりにくい時があり、自分の気持ちや考えを優先させてしまいがちです。相手の都合を考えて自分が合わすというより、一方的な行動で失敗してしまうこともあります。

こうした事態を未然に防ぐためには、最初からルールを設定し、それを本人に対して明確に提示することです。

アスペルガー症候群の人はルールや決まりは守るべきものという意識が強いですから、はっきりとしたルールがあったほうが行動の指針となりやすいのです。

一度明確なルールを決めた後は、一貫してそれを変えないことが大切です。もし気まぐれな変更や場当たり的に対応すれば、決められたルールは信頼を失い、混乱を招くばかりです。

最初は乗り気でなくとも、一度習慣として定着すると、それを続けることに安心感を抱くようになります。

ルールの矛盾に対するいら立ちに対処する

アスペルガー症候群の人であってもそうでなくても、一度決められたルールが守られたり守られなかったりするといら立ちや混乱を招きます。

ルールを守るべき人たちが守るかどうかという問題ならば、それは、その人たちが努力して守ればそれで収まることです。

しかし、家庭で一貫して守られるルールでも学校や会社というふうに環境が変化すれば同じルールが適用されるとは限りません。まして企業社会の中には、矛盾や一貫性に欠けることなど山ほどあるのです。

これといった特効薬があるわけではありませんが、社会の中では現実問題としてそういうことがあり得るということをある程度認める、受け入れることはやむを得ないことです。

本来、ルールを守らなければならない人が守らないことがよくあることなのです。それは相手の問題です。

また、私たちの生活している社会には、暗黙のルールも存在し、それが本人に理解されていないとき、ストレスを生み出すものとなりかねません。

暗黙のルールも具体的に説明

アスペルガー症候群の場合、言葉を文字通りに受け取ってしまう傾向があります。言葉の裏にある本当の意図や言外のニュアンスなどは分かりにくいのです。

社会の荒波に揉まれてきた人は、自らの経験上、社会には言葉で語られることだけでなく、言外の意味や意図を読み取り、相手の意向と調節しながら、こちらの意図や願いを表明してゆかなければならない場面が多々あることを知っています。

ですから、「暗黙の了解」、つまり多くの人が説明なしで理解している内容をきちんと具体的に言葉で説明してあげる必要があります。

たとえば、「人に会ったら、微笑んで相手の目を見てあいさつする」、「女性と話すときは、年齢を尋ねたり、体重を尋ねたりしてはいけない」などと具体的に説明するほうが頭に入りやすいのです。

できればその理由も説明するとなおいいでしょう。誰でもそうかもしれませんが、アスペルガー症候群の人も、ルールとして説明されると非常に納得がゆきます。人間関係にも暗黙のルールが存在していることを具体的に説明してあげると助けになれます。

たとえば、「誰かと一緒にいるときに一言も話しかけないと相手は無視されていると感じる」、「どんなに正しいことを主張しても相手を怒らせたら、相手はこちらの正しさを認めるのがかなり困難になる」といったようなルールです。

私たちが日常生活で、誰に説明されたわけでもないのに知っているような「常識」、「あたりまえ」は、具体的な説明に今まで触れることのなかったアスペルガー症候群の人からすれば、知らない世界かもしれません。

それを知ることはアスペルガー症候群の人たちの生活の質の向上につながるのです。

※2013年発表のアメリカ精神医学会の新しい診断基準DSMによりますと、広汎性発達障害やアスペルガー症候群は「自閉症スペクトラム障害」という名称で統一されることになりました。よって、日本においてもこれからは「アスペルガー症候群」という呼び方はなくなるものと思われます。新しい病名は「自閉スペクトラム症」もしくは、「自閉症スペクトラム障害」(AutismSpectrumDisorder 通称ASD)となります。