適応障害の例

ストレスレベル

どういうものを適応障害と呼ぶのでしょうか。ここでは佐藤さんと鈴木くんの例を取り上げて説明しています。

佐藤さんの場合―仕事上のストレス

佐藤さんは大学卒業後、大手出版社にめでたく入社し、営業部に配属されました。もともと人と会って話すのも好きで、体を動かすのも好きな活発な女性だったので、取引先を走り回ることにもそれほど苦を感じず、仕事をきちんとこなしていました。

3年、4年と経験を積むうちに、仕事を楽しみ、良い成績を残せるようになりました。しかし、5年目、27歳のときに営業部から総務部へ人事異動となりました。今までの営業とは違い、総務部ではデスクワーク中心です。

人と直接会って会話するのを得意とする佐藤さんにとって、毎日パソコンに向かうのはどうも楽しくありません。営業をしていた頃との大きな違いにショックを受け、新しい仕事に思うように身が入らない毎日でした。

営業をしていたころの明るくて活発だった佐藤さんですが、いつしか「元気ないね、だいじょうぶ?」と声をかけられることが多くなりました。同僚と昼食をとっていても、どことなく生気がなく、食欲も少ないのか、箸が進みません。

こうした日々を送っているうちに周囲とも距離ができるようになってしまいました。ところが、学生時代の友達と休日に会うと佐藤さんの本来の元気と明るさが前面に押し出されて、周囲が見る限り順風満帆に思えます。

仕事のときとは大きく違います。また月曜日となり、いつもの日課が始まると、暗い佐藤さんが戻ってきます。仕事がつまらないと上司に相談できるわけでもなく、毎日とても疲れて帰宅します。

ついに、どうしても出勤する気になれない朝がやってきて、欠勤することにしました。翌日になってもやはり出勤できず、また休んでしまいます。これが始まりとなって、佐藤さんは休む癖がついてしまい、欠勤が続くようになります。

佐藤さんの場合、知らぬ間に仕事上の異動がストレスになってしまったようです。

鈴木くんの場合―家庭内不和

子供でも適応障害になることがあります。鈴木くんは中学2年生の男の子です。学校ではどっちかというと友だちもそんなに多くない、おとなしい生徒です。

部活をするわけでもなく、これといった打ち込めるものがあるわけでもなく、家と学校と塾を通う日々です。小学生のころから父親は教育熱心で、鈴木くんの進路には大きな関心をもっています。

そんな父親とは裏腹に、当の鈴木くんはそれほど熱がはいっているわけではありません。父親はすべてのテストに目を通し、小さなミスも許さないほど教育熱心で、そんな父親と鈴木くんとの間を取り持ってくれるのが母親でした。

鈴木くんの成績が悪いと父親は母親にも責任転嫁をし、「お前の管理が行き届いていない」と責めることがあります。受験が迫ってくるにつれ、父親の熱心さも増してきました。

どちらかというと完璧主義の父親は鈴木くんの成績だけでなく、母親の生活上の失敗事も厳しく叱責します。このごろストレスが溜まっているのか、夫婦喧嘩も連日のようになってきました。

自分の成績のことで両親が言い争っているのも鈴木くんからすると嫌なものです。そんな両親が行き着いた先は、なんと別居だったのです。父親の態度に我慢の限界がきた母親が家を飛び出したことにより、別居状態に入ってしまいました。

厳しい父親との間を取り持ってくれた母親が不在の家に、鈴木くんのやすらぎの場はありません。もちろん、「受験、受験」とけしかけられる塾にも、友だちもそんなにいない学校にも居場所が無いように思えます。

もともと信頼関係の弱い父親との間もさらに悪くなり、顔を合わすと文句を言われる日々。母親がいなくなったことに加え、父親との関係もストレスの原因となりました。

鈴木くんもついに、勉強をやる気をなくし、父親に対し反抗的になり、口答えしたり、暴れたりするようになってしまいます。数ヶ月の間でかなり荒れてしまった鈴木くんは、ふてくされたような態度をとり、攻撃的で、スリルを求めるような少年になってゆきます。

ついに、タバコを吸っているところを先生に見つかり、受験前の大切な時期に大きな問題を起こしてしまいます。

よくあること

この佐藤さんと鈴木くんのケースは特別なことではなく、よくある適応障害です。あなたの周囲にもこのような人がいるでしょうか。私たち自身がこうなってしまうことも十分あり得ます。

共通するのは引き金となるストレスの原因がはっきりしていることと、その原因がなくなればおそらく落ち着くであろうという点です。