インターネットゲーム依存症 麻薬と同じ

Broken brain

中国科学院大学武漢物理・数学研究所のレイハオ教授らは、インターネット依存者の若者(オンラインゲーム依存者とそれ以外のネット依存者を含む)18名と、そうでない若者17名を対象に脳の画像解析を行いました。

すると、インターネット依存者の若者はそうでない若者に比べ、眼窩前頭葉(がんかぜんとうよう)、前帯状回(ぜんたいじょうかい)、外包(がいほう)、脳梁(のうりょう)などの大脳皮質で神経ネットワークの走行の乱れが確認されました。

「どういうこと?」と思われるかもしれませんが、実は、同じような状態がコカイン、大麻、覚せい剤、ヘロインなどの麻薬中毒者の脳で起きています。つまり、インターネット依存者の脳では麻薬中毒患者の脳に起きているのと同じことが起きているのです。

インターネットやオンラインゲームのやり過ぎは脳に悪影響ではないかと考えられてきましたが、いよいよネット依存によって脳が壊れてしまうということが現実味を帯びてきたようです。

影響を受けていることが確認された眼窩前頭葉は、やってはいけないことにブレーキをかけたり、逆に報酬が得られる行動を起こすようアクセルを踏む役割、また、善悪や価値判断をしたりすることに関係しています。

これらが支障を受けると、怒りっぽくなったり、優先順位がおかしくなってネットゲームばかりやったり、他のことには無気力・無関心といった傾向が出てきます。前帯状回は共感性、痛みや危険の認識、感情の調整などに関わっています。

これが悪影響を受けると、他人の気持ちに無関心になったり、冷淡になったり、うつ状態や情緒不安定、危険に鈍感、注意力の低下といったことが見られるようになります。

外包はどうでしょうか。外包が障害されると、無気力で自閉的な傾向が強まり、以前とは人格が変わってしまったかのようになることがあります。

麻薬中毒患者は、無気力・無関心、投げやり、人格荒廃といった点が観察されますが、インターネット・ゲーム依存でも脳の状態が同じようになるので、同じような症状が表れてきます。

脳の萎縮

中国にある安徽(あんき)医科大学附属病院の研究チームは、インターネット・ゲーム依存者たちの脳とそうではない健常者たちの脳を比較したところ、眼窩前頭皮質、両側の島皮質で灰白質の顕著な萎縮が発見されました。

その萎縮はインターネット・ゲーム依存の程度が強いほど、多く見られました。眼窩前頭皮質はすでに述べたように、やるべきことをやったり、やってはいけないことにブレーキをかけたりする意欲・自己抑制、価値観、善悪判断の中枢です。

では、島皮質が萎縮するとどうなりますか。そこが影響を受けると、自分の感情が生き生き感じられなくなったり、恐怖や痛みに鈍感・無頓着になったり、相手の感情がわかりにくくなったりします。

これら脳内で萎縮が起きるということは、脳の神経細胞が死滅していることを意味します。残念ながら、一度死んでしまった神経細胞は元には戻りません。

インターネット・ゲーム依存により、貴重な時間や、現実世界での人間関係、体の健康といった様々なものが失われるだけでなく、脳の細胞までが破壊されてしまうのです。

ドーパミンの放出量は覚せい剤に匹敵

イギリス、ロンドンのインペリアル・カレッジと、ハンマースミス病院の研究者たちは、ゲームをするときに脳内で何が起きているかを報告しました。

8人の男性が50分間ゲームを行ったとき、ゲーム開始前と終了後で比べると、脳内の線条体と呼ばれる領域で、幸福や充実を感じるホルモンであるドーパミンの放出が2倍に増えていたことが確認されました。

ちなみに覚せい剤を静脈注射したときのドーパミンの放出量は2.3倍といわれています。ですから、ゲームを50分間やったときに脳内で放出されるドーパミンの量は覚せい剤にほぼ匹敵するのです。

脳内の線条体は快感の中枢であり、そこでドーパミンが放出されるということは、快感をより多く感じることを意味します。

私たち人間の脳は快感をもたらした行為を繰り返し求めようとするので、より一層同じ行為を繰り返したくなり、それが依存へとつながっていきます。

国レベルでの対策

これらのことを踏まえ、インターネット・ゲーム依存が深刻な中国、韓国ではすでに国レベルでの対策が行われています。韓国では2011年より、16歳未満の児童に対して夜中0時から朝6時までインターネット接続ができないように規制されています。

中国でオンラインゲームをする場合、18歳未満の児童であるかどうかを把握するため、本名での登録が義務付けられ、身分を証明する住民登録番号も必要とされます。

また、インターネット・ゲーム依存に陥った若者の治療のため軍隊式の教育キャンプが北京をはじめ250ヶ所以上に設けられています。

そこでは迷彩服を着せられ、迷彩服姿の兵士に監視され、外界と遮断された建物の中で3~4ヶ月にわたってネットができない苦しい日々を過ごします。

軍隊式の訓練とともに、医療・心理スタッフによる治療セッションや薬物療法、食事・生活管理などが行われ、全面的にサポートされます。

こうした施設に入る若者の多くは自分で来るわけではなく、たいていは親の意向によって強制的に連れてこられるパターンがほとんどです。半ば無理やりなこの方法には賛否両論あるかと思いますが、全体で見ると効果が出ているようです。

こうしたキャンプから卒業した若者の3分の1は再びインターネット・ゲーム依存の罠にハマりますが、3分の2はネット依存から脱却します。

日本においてはインターネット・ゲーム依存は水面下で増加し続けていますが、その対策が遅れているのは否めません。