不眠対策 眠りは求めれば逃げてゆく

眠りは追いかければ逃げてゆく

睡眠に関して悩みを抱える人は多いようです。不眠症の人は日本人のうち5人に1人、何らかの睡眠障害を抱えている人は3人に1人とも言われています。

不眠症の人は「眠れない」ことが悩みで、寝れない時には「明日のために眠らなければならない」という気持ちを健康な人以上に持っています。そのことがいっそう緊張を生み、睡眠に必要なリラックスを妨げています。

眠れないことは時間の浪費、翌日の気力や体力に響き、パフォーマンスにも悪影響がでるなど、マイナスイメージと結び付けられています。とても夜の休憩を楽しむどころではありません。

完璧な眠りを求めすぎ!?

では、不眠症の人は眠りに対してどのような期待を抱き、どのようになれば満足するでしょうか。それは、「毎日すぐに眠りに落ち、朝までぐっすり眠れること」ではないでしょうか。

通常そのようになるときは、かなりの睡眠不足か、疲れがたまっている時です。もしくは、うつ病や統合失調症など、何らかの疾患があって、多くの睡眠を必要としている場合です。不眠症の人の多くは「完璧な睡眠」を求めすぎているところがあります。

不眠症の人は眠れないこと自体より、理想的な眠りに対する過剰な欲求と、その欲求が妨げられる恐れのほうに苦しみを感じ、問題視します。睡眠に対する偏った囚われ、認知のゆがみがあるのです。

その偏った囚われの根底には「眠れないことは悪いこと」という思いがあります。そこを発端として、睡眠不足がもたらす様々なダメージと結びつけ、さらにストレスを感じる悪循環に陥ってしまいます。

リフレーミング

偏った認知のゆがみをリフレーミング、認知行動療法によって、新しい視点から捉え直すことにより、不眠症のストレスを軽減させることができます。

重要なことのひとつは、眠れなくても目を閉じて横になっているだけで、思っている以上に良い休憩になることを知っておくことです。

横になっているだけで、肝臓や腎臓への血液流入量が数十パーセント増加し、老廃物の代謝や排出がすすみます。目を閉じていることによって脳からアルファ波が出て休息状態に入ります。

目を閉じて横になっているだけで十分休息になるのです。では、「毎日すぐに眠りに落ち、朝までぐっすり眠れること」は人間の本来の眠りの姿なのでしょうか。

本来の眠りの形

人間の本来の眠りの姿に関し、アメリカの精神衛生研究所のトーマス・ヴェーアは、興味深い実験を行いました。

ボランティアを募り、彼らに先史時代の人類と同じように、日の出とともに起き、日没とともに眠るという生活をしてもらったのです。その結果、実験に参加した人の睡眠・覚醒パターンに面白い変化が表れました。

彼らは暗くなって横になるとすぐに眠るのではなく、2時間ほど眠れないまま過ごした後、眠りに落ち、4時間ほどの深い眠りの後、夜中に目を覚ましました。

そのまま2時間ほど横になって休息状態で目が覚めています。そしてその後、再び眠りに入り、4時間ほどぐっすりと眠りました。

太陽が沈んでから昇るまでの10時間ほどの夜間に、実質眠ったのは8時間で、その8時間も2回に分けて眠りました。

そして真夜中に2時間ほど目が覚める時間があったのです。この真夜中の2時間を彼らはどのように感じたのでしょうか。不眠症の人と同様、眠れないと悩んだでしょうか。

いいえ、彼らはこの目覚めて過ごす時間をあせりやマイナスの感情を抱くことなく過ごしました。その時間は彼らにとって心地よく、いきいきと感じられ、様々なことを空想したり、瞑想したりする有意義な時間になったのです。

この実験結果からヴェーアは、本来人間は、長い夜を一気に朝まで眠るというより、途中で目が覚める時間があったのではないかと考察しています。

そしてその時間は、昼間の覚醒した時間とも睡眠の時とも異なる「第3の時間」として多くの人の間に普通に存在していたのではないかと見ています。

いつしか生活が忙しくなり、電球が発明された近代になって、眠りそのものに対する人間の見方が変化したのかもしれません。

不眠症の人が常々抱く脅迫観念にも似たような思い「眠らないといけない」…寝つけない床の上でこう思い過ぎることにより、かえって眠りは遠ざかってゆきます。

眠りは求めようとすると逃げていく性質をもっているのです。ですから、こちらから無理にでも眠りを追いかけようとするのではなく、向こうから来るように仕向けることができます。

睡眠制限療法

自分で行えることのひとつに「睡眠制限療法」があります。これは睡眠時間を制限し、意図的に自分を睡眠不足の状態にすることによって、眠りが向こうからやってくるように仕向ける方法です。

たとえば、夜11時に眠って、朝7時に起きたい睡眠パターンを手に入れたいとします。そのとき、夜11時に床につき、どんなに眠れなくても朝5時には起きてもらいます。

一度起床したら、どんなに眠くても夜11時までは昼寝も含め、いっさい寝ないようにします。おそらく睡眠不足のため、寝つきがよくなるものと期待できます。

このパターンを繰り返し、寝つきがよくなったら朝起きる時間を30分ずつ遅らせてゆきます。そして、最終的に朝7時にもってゆくわけです。

これにより、寝つきがよくなるだけでなく、睡眠の質も改善されます。

ただ、最初のうちは日中の睡魔がかなりきついかもしれません。また、起床時の苦痛も伴いますので、かなり強固な意志が求められます。

不眠症の人は睡眠と朝の覚醒のリズムが崩れていることが多く、また、その切り替わりが悪いケースも多いようです。寝付きが悪く、朝起きにくいのは、睡眠と覚醒の切り替わりがスムーズにいかないためと思われます。

これを改善するには、多少無理をしてでも起きるということが大切です。起きる習慣がつけば、自律神経も鍛えられ、睡眠と覚醒の切り替わりも鍛えられます。そのためにこの「睡眠制限療法」は役に立つのです。