認知のゆがみがうつ病を促進する

認知のゆがみ

「認知」とは一体何でしょうか。認知とは、ものの考え方やとらえ方のことです。私たちは皆、現実をありのまま客観的に見ているわけではありません。自分自身の主観的な見方や判断に基づいて現実を見ています。

たとえるなら、私たちは皆それぞれが自分自身の見方というメガネをかけています。そのメガネを通して現実世界を見、判断しているわけです。同じものを見ても、人によって感じ方が違うのひとりひとり認知の仕方が違うからです。

ここでは、間違った認知のよくあるパターンについて7つ取り上げます。間違った認知もひどくなると自分自身を追い詰め、うつ病を発症させたり悪化させたりします。

①恣意(しい)的推論

恣意的推論とは、確たる証拠もないのに、ほんのわずかな根拠にだけ基づいて安易に信じ込み、思いつきで物事を独断的に推論したり判断したりすることです。

たとえば、しばらくの間、親しかった友人から連絡がないだけで、その人に嫌われてしまったと考えるような状態がこれに相当します。

②二分割思考

二分割思考は、白か黒か、100点か0点かなどと、物事をはっきりと両極端で区別したがることです。あいまいな状態や中間地点で落ち着くといった中途半場なところでは気が済みません。

③選択的抽出

選択的抽出は、自分が関心のある事柄にだけ気を奪われ、結論を急いで出すような状態です。たとえば、健康問題が気になっているとき、自分の身体にちょっとした不調が出ただけでも、そのことばかり考えてしまい、ほかのことは目に入らなくなるような状態です。

④過大視・過小視

これは③の選択的抽出の続きになるかもしれませんが、気になることを過大視したりします。ちょっとした身体の不調があるだけで、重大な病気にかかっているのではないかと過大視するようなことがこれに当たります。

また、失敗したことや欠点ばかりに目がいってしまい、上手にできたことや長所などを忘れて過小視してしまうような状態もこれに相当します。

⑤極端な一般化

極端な一般化は、ごくわずかな事実だけを取り上げて何事も同様に決めつけてしまうような状態です。たとえば、一度失敗しただけなのに、「自分は何をやっても失敗する、ダメ人間」などと決めつけてしまう極端な状態のことを指します。

⑥自己関連付け

なんでも自分に関連付けて考えてしまうことを自己関連付けといいます。これはたとえば、職場のチームで共同のプロジェクトをすすめているような時に行き詰ったり、失敗してしまった場合、そのことを自分のせいだとこれといった理由もなく自分に関係づけて責めるような状態をいいます。

⑦情緒的な理由づけ

情緒的な理由づけはその名の通り、自分自身の気分や気持ちを判断基準にしてしまうことをいいます。たとえば、新しい仕事を教えられたときによく理解できない場合、「初めてのことだから理解できないこともある」とは考えずに、「こんなに不安になっているのだから、今回の仕事は難しいし、失敗するに違いない」などと思い込んでしまいます。

認知のずれは気づきにくい

これらの間違った認知の型はよくあるケースです。現実とかけ離れた見方が自分自身を苦しめ、失敗や間違いを招きかねません。

やっかいなのは、間違った認知をしていても、自分自身で気づかないところです。家族や同僚、友人などが親切に指摘してくれ、軌道修正できればよいのですが、気づかぬままどんどん深みにはまり、状態が悪くなってしまうことがあります。

誤った認知の型は、うつ病発症リスクを引き上げ、うつ病を悪化・慢性化させてしまう要因です。うつ病にかかるほとんどすべての人がこの認知のずれを知らないうちに体現するようになっていますから、遅かれ早かれ、精神科や心療内科などの専門医にその「ずれ」を指摘される場合が少なくないのです。