パーソナリティ障害に共通する5つの特徴

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パーソナリティ障害(人格障害)とは、一言でいえば「性格の著しい偏りのために、自分自身と周囲が苦しむ状態」で、生活に支障をきたすほど程度の強いものを指します。多くは思春期以降に徐々にはっきりと現れてくるようになります。心に大きな傷を負うような体験によって強化されることもあります。

パーソナリティ障害にはたくさんの種類があります。このサイトでも「シゾイドパーソナリティ障害」、「依存性パーソナリティ障害」、「反社会性パーソナリティ障害」、「回避性パーソナリティ障害」、「境界性パーソナリティ障害」、「妄想性パーソナリティ障害」、「強迫性パーソナリティ障害」、「演技性パーソナリティ障害」、「統合失調型パーソナリティ障害」、「自己愛性パーソナリティ障害」を取り上げています。

パーソナリティ障害は、そのタイプによって特徴が異なりますが、根底には共通する特徴があります。パーソナリティ障害の根本的な症状は、一言でいうと「幼い心の状態に陥っている状態」です。成長途上で止まっていたり、退行を起こしていたりします。ここでは、パーソナリティ障害に共通する5つの特徴について注目しています。

白か黒かの両極端思考

共通する1つ目の特徴は、白か黒か、全か無か、100点か0点かと両極端に考えてしまうことです。これは二分法的思考ともいいます。他の人が自分に親切で、優しく接してくれたときには「すごくいい人」ですが、こちらの期待に答えないような場合には一気に「悪い人」になってしまいます。

この二分法的思考はどのように生じ、その人の思考の特徴となるのでしょうか。

オーストリアのウィーン出身の女性精神分析家で、児童分析が専門のメラニー・クラインは、幼い子どもを観察する中で、乳児が大人とは異なる対象との関わり方をすることに気づきました。

乳児は母乳によって栄養を得ますが、その時期、乳児は母親という全体的な存在ではなく、乳という一部分でしか見ません。

ミルクがよく出るときには「良い乳」、ミルクの出が悪い時には「悪い乳」とみなすことがわかったのです。同一の対象を目の前にしているのに、まるで別々の存在を相手にしているかのように振る舞うことが観察されました。

メラニー・クラインは、こうした部分部分でつながった対象との関わり方を「部分対象関係」と名づけました。パーソナリティ障害をかかえる人は、この「部分対象関係」が大人になっても優位に残存しているために、白か黒かで両極端に判断してしまう二分法的思考につながっているのではないかと考えられています。

傷つきやすさと人間関係の不安定さ

共通する2つ目の特徴は、傷つきやすさとそれに伴う人間関係の不安定さです。通常なら聞き流して忘れてしまうような他人のささいな言動に、落ち込んだり、いらだったり、気に病んだりしてしまうのです。

これは1つ目の二分法的思考とも関係しています。問題がない場合には良好な人間関係を維持することができますが、自分の思いに反すると付き合いを避けたり、攻撃したりと、人間関係が不安定になります。誰でも人間関係の難しさや傷つく経験はありますが、パーソナリティ障害をかかえる人はその傾向がいっそう現れやすいようです。

根底にある自己否定感や劣等感

共通する3つ目の特徴は、根底に自己否定感や劣等感をかかえているという点です。それを無意識に補おうとする心理が様々な行動パターンになって現れます。

それは、自分自身を大きく見せようとしたり、秩序にこだわることによって弱い自分を守ろうとしたり、悪い自分を演じることで、自分の存在を示そうとしたりする行動かもしれません。

本人が抱えるこうした自己否定感や劣等感は必ずしも周囲の人が分かるわけではありません。表面的な付き合いでは、安定しているように見える場合がよくあります。

しかし、深い仲になってみると、実はもろい面を有していることがわかるかもしれません。防衛のために機能しているメカニズムが剥がれてしまうと、急に弱気になって、うつを発症したりすることもあります。

自分へのこだわりの強さ

共通する4つ目の特徴は、自分へのこだわりが異常に強いという点です。自分のことを過大視するにしても卑下するにしても、そこにはバランスの悪さがあります。

自分へのこだわりは自己愛ともいえますが、バランスの取れた自己愛を持つようになるためには、それなりの環境が必要です。

人間には幼少時、「誇大自己」というすべての関心を独占し、神のような万能感を抱く時期があります。これが適度に満たされることによって、バランスの取れた自己愛へと発展してゆきます。

しかし、この自己愛が否定されて十分に満たされなかったり、過度に満たされ過ぎたり、親を愛せなかったり、親に失望したりすると、自己愛の発達が妨げられます。結果として貧弱な自己愛へ発展したり、歪に肥大した自己愛へ発展したりします。

こうした自己愛障害は、周囲に全面的に依存するしかない幼児を取り巻く環境が大いに関係しています。本人に責任はなく、どうしようもありませんでした。こうした異常な自分へのこだわりにも性格の悪さといったものではない、きちんとした理由があるのです。

自他の境界があいまい

共通する最後の特徴は、自分と他人との境界線があいまいで、混同しやすいという点です。

こうした混同はたとえば、自分が好きなものを相手の好みに関係なく押し付けたり、自分が相手のことを嫌っていると、相手も自分のことを嫌っていると感じたりするところに現れます。相手がどのように感じているかは目に入らず、自分と同じように相手も考えているという根拠の無い前提があります。

相手が父親に似ているだけで、自分が父親に対して抱く感情をそのまま相手に向けることなどもこれに相当します。この自他の境界があいまいという点に関しては、「自分と他人の境界がよくわからない混同思考」のページでも注目していますので関心ある方はどうぞご覧ください。