うつ病の要因 人間関係

コミュニケーションギャップ

私たちにとって人間関係は喜びをもたらすこともあれば苦痛をもたらすこともあります。うつ病に特に関係のある人間関係は、喪失体験やコミュニケーション・ギャップ、役割変化、人間関係そのものの欠如などがあります。ここではこれらについて取り上げています。

喪失体験

喪失体験は愛する人の死という代表的なものをはじめとして、大切な人やペットや物をなくしたり、別れたりして、自分自身と決別することを指します。

喪失体験にはいくつかの段階があります。まずは、別れという事実を認めたくない「否定」の段階です。つらい現実に向き合おうとせず、「こんなひどいことが自分に起きるはずがない」と否定します。

次に来るのは、いつまでも現実逃避できるわけがなく、それを認めなければならない段階です。自分自身にとってとてもつらい別れが生じたのだと理解し、それが心の動揺、嘆き、怒り、悲しみを引き起こします。これが第二段階である「心の動揺」です。

時間が経つにつれて少しずつ失った悲しみが和らいでゆきます。別れを現実として受け入れ、またいつもの自分に少しずつ戻っていきます。この段階は「脱愛着」というもので、今まで愛着を抱いていた対象から距離を保っても大丈夫になってゆく状態です。

これらの段階がスムーズにいけば喪失体験を乗り越えられるのですが、うまくいかないことがあります。

たとえば、別れというつらい現実にいつまでも向き合えなかったり、別れた相手を美化しすぎて目の前の現実がひどく退屈に見えたり、別れを引き起こした自分自身をひどく責めたり、別れた相手の欠点ばかりを思い出してずっと腹を立てていたりなどです。

別れの影響がすぐに表れることもあれば、時間が経ってから出てくることもあります。どちらにしても、喪失体験は気持ちを沈ませ、憂うつにさせるものです。

喪失体験時は誰でも落胆するため、うつ病発症リスクや悪化リスクが高まります。そのようなときには、現実からあまりにもかけ離れた極端な気持ちを引きずり続けていないか、考えてみることが大切です。

コミュニケーション・ギャップ

実際に別れを経験しなくても、コミュニケーション・ギャップにより、家庭内別居のような時間や場所は共有しているにもかかわらず、心が通っていない状態に陥ることもあります。

家庭においては夫婦や親子の間で、職場においては上司や部下、同僚との間で、また、恋人との恋愛中にもこうした考えや気持ちの食い違いはよくあることです。

そうした微妙な食い違いがいつしかお互いの溝を深め、ささいなことではなくなり、心痛の原因となることがあるのです。

やはりお互いに口にしていない気持ちをはっきりと伝える必要があります。「相手はわかっているだろう、自分はわかっているつもりだ」と憶測や思い込みに注意が必要です。

いつでも意思疎通の道を開いておかないと、誤解や思い込みが私たちに落胆をもたらし、心に大きなダメージとなることがあります。

役割変化

うつ病のきっかけになりやすいものとして、進学や就職、昇進、結婚や出産といった役割の変化が挙げられます。

これはある意味でそれまでの自分との別れです。役割変化に伴い、それに沿った新しい自分を形作ってゆく必要があります。いつまでも以前の、古い自分にしがみついてばかりでは、先に進めません。

役割変化に伴ううつ病としては、昇進した後に陥る「昇進うつ病」、きつい仕事や役割の後に訪れる「荷下ろしうつ病」、就職や進学の後にやってくる「五月病」、結婚や離婚を機に経験するかもしれない「結婚うつ」、「離婚うつ」など、多くの種類があります。

役割の変化に伴う憂うつな気持ちが生じた時には、自分自身の気持ちを素直に認めることに加え、古い役割を終えることにより失ったものと、新しい役割を果たすにあたり、開けた可能性を考えて、前向きに進めるよう自分の気持ちを整理整頓することが大切です。

そのときに、新たな役割を果たすために自分自身に欠けていると思える技能や資格、特質、性格などを身につけるようにしたり、新しい役割を果たす自分をサポートしてくれるような人間関係を強化できるかもしれません。

人間関係の欠如

人間関係が煩わしいからといって、孤立無援で生きていこうとするならどうでしょうか。性格的に平気な人もいますが、多くの人にとって、孤独すぎるのは寂しいと感じる事柄のようです。

身近に悩みを相談できる人がいるかいないかで様々な病気の発症確率に違いが生じることがわかっています。

自分に自信がなかったり、内向的な性格だったりすると、相手の人の気を悪くしないか、自分が拒絶されはしまいかと積極的に人間関係を築いていく障害となることがあります。

中には、相手の人が何を考えているかはっきりわからないと安心できない人もいます。十分に相手の気持ちを理解しないまま自分の気持ちを表現してしまうと、お互いの関係がまずくなりやすいと思い込んでいるかもしれません。

遠慮して自分の世界に閉じこもりがちになると、ますます相手の人の気持ちはわからなくなります。気持ちのやり取りが少なくなればなるほど、お互いの距離は遠くなり、一層乾いた、うわべだけの人間関係になってしまいます。

人間関係がうまく持てずに自分の世界に引きこもりがちになっているときは、どのような場面でうまくいかなくなっているかを思い返してみることができます。

自分の苦手なパターンを知り、そうした苦手な場面に陥らないよう回避したり、前よりも上手に対処できる方法を考えてみたりできます。他の人の意見も参考になるかもしれません。