演技性パーソナリティ障害とは

注目

演技性パーソナリティ障害(英語: Histrionic personality disorder,通称HPD)とは、本来の自分の姿は影を潜め、演技している様々な役によって生きている人です。解離性同一性障害(多重人格)のように、本当にいくつかの人格があるわけではなく、あくまで本来の自分がいるうえで、人々からの注目を集めるべく役柄を演じます。

なぜ演技するのでしょうか。それは、彼ら彼女らにとって、他人からの注目や評価こそがアイデンティティ(存在価値)だからです。注目されないと彼らはたちまち不安になり、落胆し、うつ状態に陥ったりします。

そのため、人々から注目されるために彼らは様々な役をこなします。そのためなら手段を選びません。注意をされるために、様々な犯罪や自傷行為、自殺企画、薬物乱用、性的乱れといった自分を傷つけることも平気で行います。これらは演技です。

自己愛性パーソナリティ障害の人のように、生身の自分自身で勝負するわけではなく、自分の演じる役柄で勝負します。演じ切るためには嘘もつかなければなりません。心から演じるので、自分自身の嘘を自分で信じてしまうこともよくあります。

つじつまを合わせるためにつく他愛もない嘘から、相手に強力なインパクトを与える嘘までその人生は嘘まみれです。嘘をつく目的は、相手をだますというより、嘘によって引き出される相手の反応を得るためです。その反応の大きさ、自分への注目度に彼らは酔いしれるわけです。

たとえば、重大な犯罪の被害に遭ったといえばどうでしょうか。びっくりするような高学歴や職歴を明らかにしたら、相手はどう反応するでしょうか。代々続いている名門の家系であることを知らせるとどうでしょうか。著名人や有名人と密接なつながりがあるとしたら相手はびっくりするでしょうか。

こういったものが人の大きな反応を引き起こすことを彼らは本能的に知っているので、嘘の材料としてよく用います。彼らはとにかく、人々からの注目を刺激とし、次から次へとターゲットを変えて新たな刺激を求め、演技を繰り返します。

特に異性からの注目を集めることに彼らは熱心です。魅力的な外見や服装、しぐさ、声の調子や身振り、表情、性的アピールなど、あらゆる効果的なものを用いて注目を集め、異性を誘惑します。

目的は異性間の愛情で「愛し・愛されること」、というより、注目を集めて刺激を得ることです。ですから、ロマンチックな一夜を過ごせば成功なわけで、結婚という刺激の少ない未来へ落ち着くことは望みません。

影の薄くなっている本来の自分は愛されることを必要としていますが、大抵の場合、子供の頃からずっと演技性の生き方をしてきたために、絶えず人々からの強い注目や反応を経験していないと耐え難いのです。

DSM-5における演技性パーソナリティ障害の診断基準

以下はDSM-5における演技性パーソナリティ障害の診断基準です。

過度な情動性と人の注意を引こうとする広範な様式で、成人期早期までに始まり、種々の状況下で明らかになる。

以下のうち5つ以上によって示される。

①自分が注目の的になっていない状況では楽しくない

②他者との交流は、しばしば不適切なほど性的に誘惑的な、または挑発的な行動によって特徴づけられる

③浅はかですばやく変化する情動表出を示す

④自分への関心を引くために身体的外見を一貫して用いる

⑤過度に印象的だが内容がない話し方をする

⑥自己演劇化、芝居がかった態度、誇張した情動表現をしめす

⑦被暗示的(すなわち、他人または環境の影響を受けやすい)

⑧対人関係を実際以上に親密なものと思っている