自己愛性パーソナリティ障害 原因

人生は連続体

自己愛性パーソナリティ障害はどのような原因で発症するのでしょうか。パーソナリティ障害には10ほどの種類がありますが、どれも幼少期の愛情不足やゆがんだ愛情などが関係しています。

アメリカ出身の精神科医ジェームス・マスターソンによりますと、境界性パーソナリティ障害を自己否定でのたうちまわるのに対し、自己愛性パーソナリティ障害の場合は、自信にあふれ、特別な自分にふさわしい誇大な成功をいつも夢見ていると述べています。

対照的な両者ですが、いずれにしても、自己愛の傷つきが原因であるとしています。自己愛性パーソナリティ障害が形作られるまでの過程について考慮してみましょう。

まず、子供は生まれてから自我が未発達の乳児期を過ごします。乳児期が終わりに近づき、よちよち歩きを始めた頃から次の段階へ移ってゆきます。およそ1歳半~3歳くらいまでの期間で、「分離」と呼ばれる時期です。この時期に子供は母親から徐々に分離を始めます。

この分離がうまくいくには、母親が子供を見守り、その欲求を程よく満たしつつ、徐々に自分の手から離してゆかなければなりません。

この母子分離の過程が余りにも早すぎたり、逆に母親が手放すのを躊躇して遅れてしまうと、支障が出るようになります。どのように支障がでるのでしょうか。

自己愛性パーソナリティ障害は誇大自己の残骸

この母子分離とそれに続く「固体化」と呼ばれる時期(3歳~4,5歳)には、乳児の未発達な自己は、「誇大自己」と呼ばれる段階へ進みます。

誇大自己とは、万能感にあふれ、何でも思い通りになると思い、絶えず母親からの賞賛と見守りを求める子供の状態です。一般的に誰もがこの段階を経験します。

この誇大自己がふさわしく満たされると、さらに高度な形態の自己愛である「自尊心」へと発達してゆきます。しかし、この誇大自己が親によってバランスよく満たされない場合、次の段階である自尊心へ発展しないまま残ってしまいます。

たとえば、過保護・溺愛でずっと育成された場合、「人は自分に何でもしてくれるのがあたりまえ」という思考回路が完成されてゆきます。同時に、小さな傷つきに耐え、忍耐力や自己統制能力が養われないまま、打たれ弱い人格が形成されてゆきます。

発達途中のまま残った誇大自己は、そのまま大人になってからも、歪(いびつ)な形で本人の内に存在し続けることになります。「自分は周囲とは違う特別な存在」と本気で思い込む自己愛性パーソナリティ障害の本性は、この誇大自己の未発達な残骸ということができます。

アンバランスな愛情

誇大した自己愛の原因として考えられるのは、少子化の影響により、親の愛情を独占して自己本位に、また、過保護に育てられることです。しかし、より扱いが難しい自己愛性の場合、過保護な環境に加え、一方で愛情不足や強い劣等感を伴っているものです。

たとえば、何らかの理由で必要な親の愛情は受けられないものの、祖父母など、他の誰かが甘やかして育てた場合や、親からは褒められ続けたものの、友達からはいつもバカにされたなどのケースがあります。生じたギャップ、劣等感を補うために自己愛的な傾向が強化されます。

他のケースでは、幼いころに親があまり関心を注いでくれなかったために、注目されたい、賞賛されたいという幼い自己愛が大きくなってからも満たされないまま残ってしまいます。

このように、幼い頃にアンバランスな愛情を受けたことにより、自己愛が肥大してしまい、さまざまな生きづらさを抱えて、後の人生にチャレンジせざるを得なくなります。

どのパーソナリティ障害にも深く関係している人生の最早期の愛情と世話の重要性は、いくら強調してもしきれないほどかけがえのないものです。