窃盗症

窃盗症とは

窃盗症(クレプトマニア)とは、簡単に言えば「自分の意志で制御できる範囲を超えて盗んでしまうこと」です。

この「やめたくてもやめられない状態」が本当の泥棒と窃盗症患者の違いです。泥棒は状況が許さない場合、自分の行動を制御して盗まないことを選べるのに対し、窃盗症患者は盗みの衝動があまりにも大きく、行動を制御することができません。

自分でコントロールできない時点で、ギャンブル依存症や買い物依存症と同じく、医師による専門的な治療を必要とする精神疾患です。

窃盗症は「盗み」という性質上、法に触れることになります。よって、窃盗症が及ぼす影響は大きく、盗みを働いた当人に加え、当人の親や兄弟、姉妹、配偶者、子供、被害にあった店舗など、周囲の人を巻き込み、患者の生活の質を著しく低下させます。

窃盗症は残念ながら、時間が経てば自然と治まってゆくものではありません。ギャンブル依存症や買い物依存症と同じように、慢性化しやすく、完治がなかなか難しいといわれています。

DSM-5における窃盗症の診断

DSM-5における窃盗症の診断基準は次のようになっています。

  1. 個人用に用いるためでもなく、またはその金銭的価値のためでもなく、物を盗もうとする衝動に抵抗できなくなることが繰り返される。
  2. 窃盗に及ぶ直前に緊張の高まりがある。
  3. 窃盗に及ぶとき、快感や満足、解放感などを感じる。
  4. その盗みは怒りや報復を表現するためのものではなく、妄想または幻覚に反応したものでもない。
  5. その盗みは、素行症、躁病エピソード、反社会的パーソナリティ障害ではうまく説明できない。

上記の診断基準1~5が当てはまれば窃盗症と診断されます。しかし、診断基準1は専門家の間でも議論の余地があるようです。たとえば、過食症などの摂食障害を併発しているような人が食べるものを盗むのはまさに「個人的に用いる」ためですが、そのような人でも明らかに窃盗症に陥っているケースが多々あるのです。

認知の低い疾患

窃盗症の治療が難しいことの一つに、精神科の医師でもこの疾患を適切に扱える人がまだまだ少ないことが挙げられます。窃盗症は、アルコール依存症や薬物依存症などと並んで、患者当人に多大の苦痛をもたらし、法に触れ、周辺関係者に多大な迷惑をかける疾患であるにもかかわらず、研究や理解がひときわ遅れているのです。

世間的な認知も低いため、窃盗症患者への偏見や誤解も多く、彼(女)たちに対して、単なる甘えだとか、モラルの欠けた欠陥人間、どうしようもないやつなどと簡単にレッテルが貼られてしまっています。

根本原因は諸説ありますが、もしかしたら、この病気も他の精神疾患と似たような原因を持つものなのかもしれません。それぞれが人生のつらい現実を経験してゆくなかで、盗むことによってなんとか生きるために心のバランスを取っているような気がします。