境界性パーソナリティ障害 「いますぐ来て」

風に舞うページ

アメリカのデータによれば、一般人口の2%、精神科外来患者の11%、入院患者の19%が境界性パーソナリティ障害(境界性人格障害)に相当すると言われています。有病率はたいてい共通していますから、おそらく日本においてもそれに近い数字でしょう。

女性に多く第一印象はどこか魅力的であることが多い

患者層として比較的若い人に多く、性別で見るとき、4:1か5:1ほどの割合で女性が多く占めています。

境界性パーソナリティ障害の人は大抵、初見(第一印象)はとても印象的で、魅力的なものを有しています。

ですから周囲の人から見れば注意を惹きつけられずにはいられないようなオーラを感じるかもしれません。また、放っておけないような、守ってあげたいと自然に思えるようなものを感じることもあります。

接していると、明るく元気に振舞っていても、ふとした瞬間にさみしげな横顔を見せたり、無理しているのではないかと感じさせることがあります。

思わず惹きつけられるような素振り

一緒に時間を過ごしていると、繊細で思いやりのある優しい振る舞いを目の当たりにしたり、よく気がつき、サービス精神も旺盛で好印象をうけるかもしれません。

かと思えば、常軌を逸したストレートな言葉遣い、図星をつく指摘をズバッと行ないます。そのギャップにこれまでにない新鮮さを感じ、魅了されることも少なくないでしょう。

あっという間に距離が縮まります。さほど時間が経ってないにもかかわらず、恋人同士のような感覚に陥ることもよくあります。甘えたり、相談に乗ってあげたり、まるで、魔法にもかかったかのように、運命の出会いだとときめくかもしれません。

こんなふうにして境界性パーソナリティの人と親しくなっていくことでしょう。

突然現れる不可解な言動

親しくなってくると境界性パーソナリティが顔を見せ始めます。

それはたとえばこんな感じかもしれません。いつものように楽しくすごして家に帰ると、相手からメールが届いています。「今日は楽しかったね、また行こうね」…そんな内容を想像してメールを開いてみます。

するとそこには、「短い間だったけど、親しくしてくれてありがとう、さようなら」と書かれています。一瞬凍りつき、意味がわかりません。混乱し、すぐに連絡します。連絡がつかず、半ばパニックのような状態です。やっとのことで連絡がついたのは翌日です。

強引に会いに行き、どういうことなのか話を聞きます。すると、「今別れないと、いつか見捨てられるから」という訳の分からない言い分なのです。見捨てるわけがありません。

急変

そこで会うのは暗い顔をし、気分の沈んだ相手です。まるで別人のようなその人に何があったのでしょうか。理由を尋ねます。

涙目になりながら、声を震わせながら語る内容は衝撃的かもしれません。打ち明けられた予想外の内容に圧倒されるように感じながらも守ってあげたいという気持ちになります。決して見捨てないこと、ずっと一緒にいることを約束します。

これで安心です。一件落着したかのように思いますが、これは始まりに過ぎません。

いますぐ来て

その日の夜、早速電話がなります。「手首を切ってしまった、いますぐ来て」。

今までの日々とはうって変わり、突然入ってくるメールや着信・何十件と並んだ履歴に、出会った時のようなときめきとは違う、不安や緊張を覚えます。

こちらがいくら慰め、安心させても、すぐに気持ちが不安定になります。すぐそばにいて、優しい言葉をかけ続けていれば落ち着いているものの、離れると元通り不安の渦に飲み込まれ、すぐにSOSが来ます。

そうかと思うと、不信感や攻撃的な言葉をむやみに突きつけてきます。こちらがため息でもつこうものなら、それだけで不機嫌になり、口も効かなくなってしまいます。突然、トイレや浴室にこもって自傷行為を始めるかもしれません。

こうなると、休む暇などなく、いつも境界性パーソナリティの人に縛られているように感じます。守ってあげたいという思いはいつしか消え、負担に感じるようになります。

もう別れてしまいたいと思いますが、相手がもし危険なことをしたら…という心配もあり、ずるずると振り回される日々が続きます。

このような展開はドラマの世界ではなく、境界性パーソナリティの人によくある話です。

境界性パーソナリティに翻弄される本人、家族、友人、恋人…今この時も世界中でこの障害に関係したたくさんの人がいます。