統合失調症 悲劇を防ぐ

同じ人のうちに喜びや悲しみがある

統合失調症と最悪の悲劇ともいうべき自殺の関係はどうなっているでしょうか。自殺というと、うつ病などを連想するかもしれませんが、実際のところ統合失調症の自殺率はうつ病以上です。

統合失調症の患者のうち、およそ50%の人が自殺企図を体験し、10~15%の人が20年以内に自ら命を絶つと言われています。

そのような悲惨な結果に至る人の多くは比較的若い患者や高学歴者です。高学歴があって、病前に社会的活躍が大きかった人ほど失意や喪失感を抱きやすいと考えられます。

本人も周囲の人も病前のレベルや活躍にこだわりすぎると、統合失調症の真っ只中にある現状を受け入れられなくなり、追いつめられることになります。

ここでは、そのような悲惨な結末を迎えないためにも、以前の価値観を捨て去ることについて考えます。

価値観の見直し

統合失調症を発症したなら、現状に合ったゆったりとした生活パターンやレベルに目標を設定し直さなければなりません。

これは本人もそうですが、周囲にも言えることです。本人がせっかく変わろうとしているのに、周囲の人がいつまでも過去にこだわり、現状を受け入れずに落胆したり、非難がましい態度を取るとどうでしょうか。

そうなると、患者本人もつらく、自分を責めたり自信喪失に陥ったりします。また、病気そのものを悪化させ、長期化や自殺・再発の可能性を高めてしまいます。

そのようなわけで、価値観の見直しは本人と家族みんなが関係しているといえます。

無意識レベルで訴えかけてくる価値観

価値観とはたとえば、「良い大学に行って一流の会社に就職する」、「一流企業に勤める夫を持つ」、「芸術の分野で成功する」など、知らず知らずのうちにその人を縛っているものです。

人はそれぞれ自らの持つ価値観から導き出される理想のライフスタイルを持っています。

人生が順風満帆で思い通りにいっているときはそれで良いのですが、いざ病気や事故などに遭遇してしまうと以前の理想をかなえるのが難しくなるものです。

そうした状況で求められるのは価値観の見直しという「変化」ですが、それに気づかないと、病気になった後も、無意識レベルで訴えかけてくる価値観に戻ろうとします。しかしそれは、病気を悪化させ、真の回復からどんどん遠ざかっていく選択なのです。

以前の価値観を捨てる

以前の理想を追い求めることが統合失調症を発症によって難しくなったなら、その価値観にしがみつくのではなく、それをいったん捨て去ることが必要です。

「頑張って成功を収めなければならない」、「働いてたくさんお金を稼ぐことが幸せにつながる」といった強迫観念のようなものから自由になる必要があるのです。

統合失調症を発症してもやがて安定するケースでは、そうした価値観の転換が起きています。しかし、いつまでも以前の自分にこだわり続けている場合、予後が悪いばかりか、自らの命を絶つという最悪の結末に至ることがあります。

世界的な視野で考えると、かつてのゆったりした世界から、近代合理主義の慌ただしい世界に突入すると同時に統合失調症が増加しました。ですから、発症してしまったなら一度そこから脱却することが鍵となるわけです。

統合失調症は現在、回復が可能な病気となりつつあります。初めて発症した人ならば、7~8割の人が回復します。しかし、再発を繰り返すにつれてその割合は下がり、自ら命を絶つ人が増えてきます。

現時点で改善に向かっているなら、それは喜ばしいことであり、しっかりと治療を続ける必要があります。

なかなか症状が消えなくても、希望を捨てることはありません。絶望は自分自身の命を粗末にします。

幻聴や妄想のような症状が多少あっても、社会で問題なく生活できている人はたくさんいるのです。症状が完全になくなるどうかより、それに振り回されないことが大切なのです。

そのためにも、ここで考えたように、まずは自分自身を縛っている価値観を見定め、そこからの脱却を試みてまいりましょう。