自己愛性パーソナリティ障害 夢やぶれた時

夢やぶれたり

自己愛性パーソナリティ障害の人が抱く誇大な自己愛「自分こそ特別」という思い、たいていの場合、残念ながら同じように思ってくれる人はほとんどいません。いざ生きてみると現実はなかなか厳しく、喉から手が出るほど欲しい賞賛は簡単には手に入らないものです。

この歪(いびつ)な自己愛と現実のギャップに苦しみ、夢破れた自己愛性パーソナリティ障害の人はどうなるでしょうか。自己愛性パーソナリティ障害の人は、自分がまさか自己愛性パーソナリティ障害とは思わないので、自ら進んで治療のために病院を訪れることはまれです。

うつ病や薬物乱用

自己愛性パーソナリティ障害の人が医療の対象になる場合、最も多いのはうつ病です。研究によると、本来のうつ病である「大うつ病」の2割近くに自己愛性パーソナリティ障害が認められるといいます。

自分が特別な存在であることを周囲が認めてくれなかったり、平凡な人間であることを何かのきっかけで思い知らされると、ひどく落胆し、うつ状態に陥るのもうなずけます。

また、自分が役立たずのちっぽけな人間であることから目をそらすように、薬物に手を出し、現実逃避に溺れることもあります。薬物乱用の治療段階になって、はじめて自己愛性パーソナリティ障害が隠れていたことが判明することもあります。

引きこもりや対人恐怖

また、自己愛性パーソナリティ障害の人が抱く特別な自己像と、周囲の人からの評価に大きなずれがあるため、人々との摩擦が生じやすくなります。自慢話が大好きで、周囲の人たちをどことなく見下し、かといって、自分の欠点は認めず、教わることを拒むような人だと摩擦が生じるのも仕方ありません。

生じる非難からなんとしても自分のプライドを守るため、身構え、神経をすり減らすため、いつしか対人関係を避けるようになり、結果として対人恐怖症に陥ることがあります。

自分の世界に閉じこもることによって、失望したり、傷つくことから身を守る、いわゆる「引きこもり」になることもあります。

被害妄想

様々な場面で自分が認めてもらえなかったり、人々からいろいろと指摘されても、それを素直に受け止めることはほとんどなく、原因を自分以外の、他人のうちに見出そうとするかもしれません。

すなわち、自分の脳力や才能が他人にねたまれて、迫害や非難を受けているという被害妄想を抱くわけです。本人が強く思い込んでいるため、真実を納得するまでの道のりは程遠いものがあります。

弱者を攻撃

うつ病や引きこもりが内側に向かうのに対し、外側に向かって弱者を攻撃するケースもあります。弱者ばかり目標にするのは、それが自分の思い通りになりやすいからです。自己愛性パーソナリティ障害の人は自分こそが特別なので、当然、自分の思い通りにしたいわけです。

他者を攻撃するケースとして、いじめやわいせつ行為、ストーカー、DV(ドメスティック・バイオレンス―配偶者や恋人への様々な種類の暴力)などがあります。あまりにも自分が特別であるという思いが肥大化しているため、他者を思いやったり、大切にすることが苦手です。

その共感性の欠如は被害者に対しても表れ、「相手に可哀想なことをした」、「つらい思いをさせてしまった」などといった感情はなく、何も感じない冷酷さがあります。

自己愛性パーソナリティ障害の人は、防衛による自己正当化が強力なため、自分の非を認めず、真の反省の念を抱きにくいため、転向にはかなりの苦労が見込まれます。

このような法に触れるような犯罪行為に走ったり、大きな挫折体験をきっかけに、自己愛性パーソナリティ障害が反社会性パーソナリティ障害に豹変することもあります。