自己愛性パーソナリティ障害の人への接し方

つながる

自己愛性パーソナリティ障害の人にはどのように接すればよいでしょうか。基本的に、相手には大人の対応は期待しないでください。「自己愛性パーソナリティ障害 原因」でも注目しましたが、自己愛性パーソナリティ障害の人は誇大自己の状態のまま大人になっていると考えられます。

誇大自己とは、誰もが子供の頃に経験する発達の途中の段階で、万能感にあふれ、何でも思い通りになると思い、絶えず母親からの賞賛と見守りを求める状態です。まさに自己愛性パーソナリティ障害の特徴を表していないでしょうか。

外見は大人でも中身は未発達な子供のまま、しかし、しっかりと高慢さやプライドは兼ね備えていますから、そのあたりを念頭に置いて付き合う必要があります。

よく知らないうちは、魅力的で感じの良い人のように見えるかもしれません。しかし、よく知るにつれ、自己中心的で粗野な部分が出るようになり、残念な意味でびっくりしたり、がっかりさせられる経験をします。

自己愛性パーソナリティ障害の人は、自分は特別という肥大した思いが支配しているので、健全な人間関係にあるような、「ギブアンドテイク(お互いに受けることや与えること」)、「もちつもたれつ」、「困ったときはお互いさま」、といったような対等の関係は成り立たないでしょう。

他人を思いやったり、譲歩したり、合わせたりといったこともできません。相手ができないことに期待をかけていては、ストレスがたまって疲れる一方です。

最もしてはいけないこと

自己愛性パーソナリティ障害の人を相手に最もしてはいけないのは、その人に異議を唱えたり、批判したり、悪い点を指摘することです。こちらがどれほど良かれと思ってしたとしても、相手からすれば、プライドを傷つけられた、自分を貶めたと捉えられてしまいます。

それは誇大した自己愛を持つ人に強い怒りを抱かせるものとなり、自分にケチをつけた行為は絶対に許されません。またたく間に攻撃や排除の対象となってしまいます。

欠点や悪いところを指摘する場合、かなり慎重に行わなければ、それまで良い間柄だったとしても一気に信頼関係が崩壊してしまうでしょう。想像以上の強い怒りを買うことになります。たとえわずかな指摘であっても、また、冗談のつもりでも、その人を否定した人はブラックリストに載せられ、徹底的に執念深く攻撃されることになります。

こちらが信頼関係ができていると過信し、その人のために忠告したのに、関係がすっかりおかしくなってしまうケースもしばしばあるので要注意です。

相手の偉大さを映す鏡になりきる

自己愛性の強い人と上手に付き合うコツは、その人の偉大さを映し出す「鏡」になることです。鏡は自分の意思を持たず、ただ自分の前に来た人を魅力的に映します。自己愛性パーソナリティ障害を持つ人に対して、鏡と同じように相手の持つ長所や望ましい点を認めることができます。

過剰と思える褒め言葉やお世辞でもこのタイプの人は子どものように喜ぶことが多いです。ただ、もう少し気難しい人の場合、的外れな褒め言葉は相手の不興を買い、逆効果となります。

ですから、鏡のように、実際に観察されるその人の素晴らしいところや、プライドを持っているところにフォーカスしてそこを賞賛することです。

「コイツは自分の価値がわかる奴だ」と思ってもらえることがまず出発点です。関係が長期化すればするほど、表面的な賞賛だけでなく、その人の優れた点の良き理解者であることが大切です。

普段からその人の言葉によく耳を傾け、その人が認めて欲しいと思っていることが何なのか、見抜く鋭さが求められます。そしてそのことを心から評価し、褒め称えるのです。

この手の人は、自分のことを評価する人を評価します。そのような関係になると、こちらもその人が気づかないような影響力を及ぼすことができるようになります。

もし、すでに関係がこじれ、ハラスメントを受けたり、不当な人権侵害が生じているなら、第三者に介入してもらうのが有効な手段です。

自己愛性パーソナリティ障害の人は対面を重んじるので、表沙汰になることには敏感です。証拠や記録を残し、それらを実情とともに上部の管理職や外部の機関に相談することが抑止力となるでしょう。

相手のふところにもぐる

自己愛性パーソナリティ障害の人が仕事の上司や恋人・配偶者などの場合、接する人は大変な苦労をすることになります。これまで述べた点とやや重なりますが、相手の特性をよく理解し、反応が大きい部分に良きアプローチをかけることができます。

一方的に相手が変化するのを期待するのは非現実的です。自己愛性パーソナリティ障害の人は基本的に小心で、嫉妬深く、負けず嫌いです。人情や義務や道理などの一般論は通用しません。彼らと接するポイントは次のようにまとめることができます。

・相手の競争相手にならない

・怒りや嫉妬を向けられるようなことを慎む

・目立たないよう、相手の脅威にならないようにする

・相手を評価し、褒め、認める

相手から「敵」ではなく、「味方」と見てもらえるように振る舞うことがカギになってきます。自己愛性パーソナリティ障害の人はとにかく賞賛が欲しいわけですから、相手が欲しいものを与えることができます。相手のふところにうまく潜り込めるかがカギとなります。

接していると、イライラしたり、気に障る点は多くあるかもしれませんが、長期的に見ると、対立するより賞賛する側に回る作戦が功を奏します。

少し言葉が悪いかもしれませんが、彼らは「おだてに乗りやすい」タイプですから、容姿から服装から能力から生活態度から業績から…様々な角度から、評価して差し上げましょう。

相手に何らかの行動や変化を求める場合、相手が心の奥深くに隠し持つ不安や嫉妬心、功名心、競争心、行動の結果得られるであろう様々な利得や賛美などに触れつつ、かなりの低姿勢をもって控えめに求めることができます。

こうして自己愛性パーソナリティ障害の人を重んじることにより、今度はこちらを重んじてくれるようになります。対等まではいかなくとも、2階級下くらいまでは見なしてもらえるかもしれません。

これらは、自己愛性パーソナリティ障害の人と信頼関係を保つ秘訣であると同時に、このタイプの人の力を引き出すコツでもあります。もし自分自身が自己愛性パーソナリティ障害ならば、自分の才能や可能性を信じてくれる人と出会うことが重要になります。

自己愛性パーソナリティ障害の人も見かけによらず、かなりの生きづらさを感じているので、彼らのささやかな喜びに寄り添ってあげましょう。

格言からのヒント(おまけ)

うまく付き合うには、相手をよく知らなければなりません。自己愛性パーソナリティ障害の人を自分の味方とみなすか敵とみなすかは別として、次に上げるような格言は助けになるかもしれません。

「Keep your friends close. Keep your enemies closer」

訳と意味:友を近くに置け、敵はもっと近くに置け

「昨日の敵は今日の味方」

解説:人の心は変わりやすく、当てにならないことのたとえで、昨日まで敵であった者が、今日は見方になることから。「昨日の敵は今日の友」「昨日の仇は今日の味方」ともいう。

「敵を知り、己を知れば、百戦危うからず」

解説:敵の実力を見極め、自分の力を客観的に把握したうえで敵と戦えば、100戦したところで危機に陥るようなことはないという意味。

「敵に塩を送る」

意味:敵が苦しんでいる時、その弱みにつけこまず、かえってその苦境から救う。

解説:戦国時代、上杉謙信が、敵対する武田信玄が塩不足で困っている事を知り、塩を送ったという歴史から。

「男は閾を跨げば七人の敵あり」

解説:男が社会で活動するときには、必ず多くの敵や競争相手があるということのたとえ。女性の社会進出が進んだ今日、この格言は女性にも当てはまる。

「あなたの敵を愛せよ」

意味:悪意を抱いて迫害するような者にこそ、慈愛の心を持たなければならないという意味。

解説:『新約聖書』にある言葉。

「If you can’t lick them, join them」

訳: 世の中を敵に回すには、世の中に就け

解説: 相手の態度、考え、やり方を変えることは難しい場合、自分の考えなどを変えたほうがいいという意味。

「If you can’t beat them, join them.」

訳:勝てないなら仲間になれ。

解説:手強い相手で、やっつけるのは無理とみたら、いっそのこと相手方に加わるがよいという意味。