統合失調症 閉鎖的な環境は症状を悪化させる

sukizo

精神科医オイゲン・ブロイラーは1857年にスイスのチューリッヒ近郊の農村で生まれました。地元のチューリッヒ大学で医学を学び、医師になるとヴァルダウ精神病院で研修医を経て、ライナウ精神病院に診療部長として赴任し、そこで12年間患者と向き合いました。

ブロイラーは熱心な医師でしたが、熱心さとともに一つの優れた特質を有していました。それは、患者に対するひたむきな献身の態度でした。

彼が赴任したライナウ病院は悪名高い精神病院で、症状が慢性化し、お手上げ状態の患者たちがろくに治療もされずに放置されているような環境でした。

患者とまっすぐに向き合う

ブロイラーは不屈の精神と無私の精神で治療に打ち込み、それまでのひどい有様だった病院の治療方針を一転させてゆきました。

独身だったブロイラーは病院に住み込み、大部分の時間を患者とともに過ごし、熱心に話を聞き、患者のための治療プログラムの改善や有効だと思える作業療法を確立してゆきました。

ブロイラーは患者のいる世界を理解するように努めました。患者の使う言葉を使い、たとえ話が支離滅裂で理解不能なように思えても、その言葉の根底にある意味を汲み取ろうと努力しました。

そのようにしたので、ブロイラーは患者ひとりひとりと気持ちの通う、信頼関係を築くことができたのです。

高い回復率

こうした取り組みの結果、ブロイラーが診た患者たちは当時としては驚異的な回復率を示しました。

満足な薬も未開発の時代でしたが、彼の担当した患者の60%が統合失調症の初回エピソード(最初の悪化)から、社会的に自立できるまでに回復したのです。

ブロイラーが非常に重視したのは、入院を必要最小限にとどめ、できるだけ患者が慣れ親しんだ環境の中で治療しようとしたことです。

入院中の患者の環境作りにも配慮を示し、静かで患者にとって心地よい空間を提供できるようにしました。また、患者が作業療法に携われるようにし、ひとりひとりが可能な範囲で簡単な作業であってもやり甲斐や喜びを見いだせるように心を砕きました。

また、患者のストレスが溜まり過ぎないよう、十分な娯楽や楽しみが提供できるように配慮し、萎縮させるような叱責や過度の負担のない環境を提供したのです。

当時のスイスが経済的に繁栄しており、就職も比較的容易だったこともあって、回復した患者たちは社会において適切な仕事に就くことができたのは幸いなことでした。

そうした点もありますが、ブロイラーの患者を人間として扱い、閉鎖的な環境から開放した取り組みは統合失調症の患者にとって、大きなプラスとなったのです。