統合失調症 幻覚や妄想を単に症状として片付けない

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病気の症状として簡単に片付けてしまうことの問題

かつてなく精神医学も研究がなされ、現在も進行中です。研究が進めばさらに理解が深まり、一般認知もたかまるものですが、問題点も出てきます。

精神医学という名前を掲げながらも、精神そのものに対する関心を失っている傾向があります。つまり、患者の非現実的な発言や行動は病気の症状として捉えられ、薬物療法で消し去ることだけに重きが置かれているのです。

もちろん、薬物療法によって症状が軽減し、本人や周囲の苦痛を軽減するのが重要なのは言うまでもありません。幻覚や妄想はそのまま放置すればするほど、脳神経系が損傷してしまうという危険な一面もあります。

表面的な対処

しかし、その人の示す症状が何らかのメッセージや心底の気持ちを表しているとしたらどうでしょうか。症状をただ消し去ることだけに焦点を合わせた治療では、根底にある真の問題点を見落とし、再発を繰り返してしまうことになりかねません。それではある意味で表面的な対処しかできていない状態です。

残念ながら精神医学の研究は数十年にわたって続けられてきたにもかかわらず、いまだ統合失調症の多くは完治が困難です。多くの患者は幻覚や妄想と引き続き付き合っていかねばなりません。

統合失調症患者の多くが直面する問題は「完全には治らない」です。治療により症状を軽減することはできても、すっかり良くなるわけではなく、幻覚や妄想と同居しながら暮らしてゆかなければならないのです。

そうした中で、患者が共に生きている幻覚や妄想といった症状を、単に病気の症状だと冷酷に切り捨ててしまうことは、それと一緒に暮らす患者からすれば、自らを否定され、気持ちを無視されているかのように感じます。

肯定と支えを差し伸べる

統合失調症の人が語る幻覚や妄想に対しては、患者の話が事実かどうかは問わず、相手が感じているであろう心理的事実を肯定してあげることが大切です。

肯定的な接し方とともに、できれば、本人が興味をもっていることにこちらも関心を示してあげることは相手の自尊心や安心感を増し加えるのにとても役立ちます。

彼らは今のところ自らの妄想にすがり、自分の存在をなんとか支えている状態です。必要なのは、自分の価値を認めてくれ、肯定してもらうことです。「理解不能」と全否定され、切り捨てられることはお互いの関係や事態を悪化させるだけです。

その非現実的に思える妄想が伝えようとしているメッセージが何か、読み取ろうとする周囲の姿勢、その人が何を望み、何に恐怖を感じているのか、その部分に共感し、肯定と支えを与えていけるかどうかが統合失調症の患者本人や家族、周囲の人、精神医学にとって大きな分かれ道となるのです。