摂食障害(特に拒食症)と身体醜形障害は、自分の外見に過度の注意を奪われ、醜いと感じ、客観的な意見とは大きく離れた思いを抱いています。ですから、「そんなことないよ」と他人がいってみたところで、信じてもらえません。ここでは、摂食障害と身体醜形障害に共通している点と違っている点について注目しています。
共通していること
摂食障害と身体醜形障害に共通しているのは…
- 発症時期が思春期や比較的若い青年期に集中していること
- 人と接していようがいまいが、悩んでいる
- 症状が慢性化しやすく、長期戦になりやすい
- 行動化がみられる(たとえば、身体醜形障害では美容外科手術へ、摂食障害では、拒食や自己誘発嘔吐、自傷行為など)
違い
では、摂食障害と身体醜形障害にはどのような違いがあるのでしょうか。
- 男女比の違い
摂食障害は、圧倒的に女性に多いのに対し、身体醜形障害はほぼ男女とも同じような比率で発症しています。
- 他人からの評価
身体醜形障害は、どちらかというと他人から見た醜さというより、自分の身体として納得がいかないという自己完結的な面があります。一方、摂食障害においては、他人から見た自分を気にして、世間の美の基準に自分を合わせようとする傾向が強いようです。
- 悩みとなる身体の部位の違い
摂食障害は、「太り過ぎているのではないか」という身体全体についての悩みが特徴ですが、身体醜形障害の悩みは身体全体というより、体のどこか特定の部位に限定されています。
- 子供時代
摂食障害になる患者の多くは、完璧な子供時代ともいえる、親や先生に気に入られるような従順、容姿端麗、協調性あり、快活といった生活を送った経歴の持ち主が多いようです。周囲の期待になんとか応じようと、常にプレッシャーを感じながら、無理をする心理面があったことも多々見受けられます。
身体醜形障害の場合は、似たようなケースもありますが、完璧とは程遠い子供時代を送ったケースもあり、様々なパターンがあります。
- 隠そうとするか
摂食障害の場合、自傷行為や、万引き、盗み食いなどを伴う事が多く、悩みや症状自体を隠そうとします。しかし、身体醜形障害の場合、隠そうとする傾向は弱く、特に家族に隠すことはないようです。ただ、外出時に醜いと強く思っている部位が人目にさらされないよう、隠すことはあります。
- 自己感覚の強弱
摂食障害に陥っている患者の場合、自己感覚の無さが目立ちます。つまり、自分の本当の気持ちがわからなかったり、具体的に何が不安で何を恐れているのか、何を感じているのかといった感覚が弱く、掴みどころがないような感じです。身体醜形障害の場合は、自分の気持ちをはっきりを持っており、自己の感覚がしっかりしています。
このように、自分の身体についての悩みという共通したものがある摂食障害と身体醜形障害ですが、両者は違う疾患です。中には両方とも発症している人もいるようです。メディアの影響が強今日、若い人を中心に増加傾向にあります。あまりにも苦しく、生活に支障があるようなら、専門医に診てもらうのがよいでしょう。